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第81話 初めての夜

last update Petsa ng paglalathala: 2026-09-26 20:00:00

車の中、二人とも何も言わなかった。

窓の外を、夜の街灯が等間隔に流れていく。その光が、車内に差し込んでは消えていった。

言葉はいらなかった。

さっき信号待ちで包み込まれた私の手は、そのまま彼の大きな手の中で、離されることはなかった。

手のひらから直に伝わってくる、いつもより高い体温。

一度繋いだ手を二度と手放さないと言わんばかりの強い力加減に、これから起こることの意味を、二人とも痛いほど理解していた。

車を降り、マンションのエントランスを抜けて、エレベーターに乗る。

繋がれた手が離れることはなく、狭い箱の中、柊さんとの距離がいつもより息苦しいほど近い気がした。

◇

部屋に入ると、柊さんはそのまま私の手を引いて、寝室へと歩いた。

照明のスイッチに触れる手が、灯りを低く落とす。オレンジ色の柔らかな光が、部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせた。

「柚葉さん」

名前を呼ばれて振り向いた瞬間、顔を寄せられた。

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